血中グルコースセンサ(血糖値センサ)の原理・仕組み

2019年3月22日金曜日

物理化学

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グルコースについて

グルコースは炭水化物が分解されることで生じる重要な代謝物のひとつです。(※1)


炭水化物の分解によって生じたグルコースは、小腸から吸収されて肝臓に運ばれます。そして血糖として全身に運ばれ、エネルギー源として利用されます。

特に、脳神経や赤血球ではエネルギー源としてほとんど血糖しか利用することができません。(※2)

そのため血液中のグルコース濃度である血糖値はホルモンなどの内分泌系や自律神経系により厳密に管理されています。



血糖値の重要性

血糖の管理は健康を維持するうえで非常に大切となります。

余分な血糖は肝臓や筋肉でグリコーゲンとして蓄えられ、必要な時に分解されますが、蓄えられる量には限界があり、限界を迎えると脂肪として脂肪組織に蓄えられるため、肥満へと繋がります。

肥満は糖尿病をはじめとする様々な生活習慣病を引き起こします。(※3)

糖尿病になってしまうと、血糖値の調節が十分に出来なくなってしまうため、血糖値を頻繁に測定して把握しておく必要があります。

そこで、病院に行かずとも自分の血糖値を把握できるグルコースセンサ(血糖値センサ)と呼ばれるデバイスが研究・開発されてきました。


実用化されているグルコースセンサの原理

現在実用化されている血糖値センサでは、指先から微量の血液を採取し、それを染み込ませた電極をデバイスにセットすることで血中グルコース濃度を測定します。

さて、この仕組みについて詳しく説明します。


①指先や腕を針で刺し、血液を電極に染み込ませます。


血液中の血糖(グルコース)が電極の試薬部分に含まれるグルコースオキシダーゼと呼ばれる酵素によってグルコノラクトンに酸化されます。

このとき、同時に、グルコースオキシダーゼは試薬部分に含まれるフェリシアン化カリウムをフェロシアン化カリウムへと還元します。 


③こうして生じたフェロシアン化カリウムに対して、電圧をかけます。
すると、フェロシアン化カリウムは再び酸化してフェリシアン化カリウムに戻ります。

この酸化反応の際に流れる電流値を測定することで、間接的にグルコース濃度を知ることができます。




以上が、血糖値センサの基本的な原理となります。


将来のグルコースセンサ

現在実用化されている血糖値センサはこのように、血液を採取する必要があり、痛みや手間、感染症のリスクなどが伴います。

そのため、これまでの血糖値センサはあくまでも糖尿病などの疾患を抱えている人が対象であり、健康な人が健康状態の確認のために使用するというのは一般的ではありませんでした。

しかし最初にも述べたように健康な人であっても様々な生活習慣病の予防という観点から、血糖値を把握しておくことは有用です。

そこで、最近ではこういった体を傷つける方法に代わって、体に傷をつけずに血糖値の測定することを目指した研究・開発が活発に行われています。

例えば、汗のグルコース濃度を測定して血糖値を推測するタイプのセンサ中赤外レーザーを利用した皮膚の上から光を当てて血糖値を測定するセンサなどがあります。

いずれもまだ実用化には至っていませんが近い将来これらが実用化され、誰もが手軽に血糖値を測定できるようになる時代が来ると思います。



※1炭水化物の分解以外にも糖新生によりアミノ酸などから合成されます。
※2糖質は必須栄養素というわけではありません。
※3ここで言う糖尿病は2型糖尿病のことを指しています。

参考サイト
http://www.chugaiigaku.jp/upfile/browse/browse1555.pdf
http://www.osaka-kyoiku.ac.jp/~ioku/foodsite/eiyouso/tousitu-w.htm http://www.suzugamine.ac.jp/arinobu/gakusyuu/toushitsu.pdf http://dmic.ncgm.go.jp/general/about-dm/010/010/01.html https://www.nikkei.com/article/DGXLASDG21H9V_R20C17A9EA2000/ https://www.mhlw.go.jp/www1/topics/kenko21_11/b7.html http://www.dm-net.co.jp/calendar/2005/001024.php

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