この手法について、かなり簡単に紹介します。
まず、サイクリックボルタンメトリー測定(以降、CV測定)とは電極電位を初期電位から反転電位まで一定の掃引速度で掃引し、また初期電位まで戻すことを繰り返し、その時の電流値を測定する手法です。
この図を見てもらうとよくわかると思います。
まず、初めに電極にかける電圧(初期電位)を -1.0 V とします。それから一定の割合(掃引速度)で電圧を上げていき 1.0 V になったら(反転電位)逆に、電圧を一定の割合で下げていきます。そして -1.0 V になったらまた電圧を上げていきます。これを何度も繰り返して、その時に流れた電流を見る、という測定手法です。
右側(正方向)に行くほど、酸化反応(アノード反応)が進行しやすく、図で示したような酸化ピークが出現しやすくなります。また、逆に左側(負方向)に行くほど、還元反応(カソード反応)が進行しやすくなり、図で示したような還元ピークが出現します。
実際の測定では、この図のようにきれいなグラフが得られることはあまりなく、水溶液中の溶存酸素が反応したり、電極の汚れが反応したりしてグニャグニャとなることがおおいです。そういった目的外の反応がなるべく起こらないように用いる電極の素材ごとに適切な電位走査範囲(電位窓)が複数の文献により示されています。
さて、こんなことをして何の役に立つの?という疑問が生まれると思いますので、この測定からどんなことがわかり、どんなことに利用できるか少し書いていきます。
図では、酸化ピークおよび還元ピークが出現していますね。これは、その電位において、酸化反応および還元反応が起こったということを意味しています。
これは、電解合成に利用できます。
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あなたはある化合物Aが欲しいとします。これまでは、化合物A'に対し、いくつもの触媒を使い、数段階の酸化反応を経て、やっとAを手に入れることができていました。
ある日、A'に対してCV測定を行ってみるとある電位でA'が酸化していることがわかりました。
興味を持ったあなたは、どんな化合物が合成されているのか分析を行った結果、選択率100%で化合物Aが生成していることがわかりました。
これにより、あなたは化合物Aを得るために複雑な反応を繰り返す必要はなくなり、化合物A'に対して特定の電圧をかけることで化合物Aが簡単に得ることができる様になりました。
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みたいな感じです。ちょっと理想的すぎますけど。
あとは、センサ性能の評価に使うこともできます。
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あなたは、血液に含まれるグルコースを測定するセンサを作りたいと考えています。
試しにグルコースを水に溶かしCV測定を行ったところ、酸化ピークが出現しました。
グルコースの濃度を増やして、もう一度CV測定を行ってみたら、酸化ピークが増加しました。このことから、グルコースの濃度が増えれば増えるほど電流値も増えることがわかりました。これを参考に濃度と電流値の検量線を作成しました。
あなたは電極を自分に刺したところ電流がXアンペア流れたので、検量線をもとに自分の血液に含まれるグルコースの濃度はYモルだということがわかりました。
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みたいな感じですかね。ちょっとふざけてますけど。
CV測定からはまだまだいろんなことがわかりますが、今回はこのあたりで。