有機化合物で考えると、炭素原子に4つの異なる原子や原子団が結合している場合、その炭素原子は不斉炭素原子と呼ばれ、立体異性体が存在します。
簡単な例として乳酸が挙げられます。
乳酸は下の図に示すように中心の炭素(C*の炭素)に4つの異なる原子/原子団が結合しているため、不斉炭素原子となり、立体異性体を持ちます。
この立体異性体は鏡で映した関係と一致するので鏡像異性体(エナンチオマー)と呼ばれます。
さて、高校化学ではこのあたりまでしか習いませんが、大学以降ではさらにジアステレオマーという立体異性体が登場します。
例えば、アミノ酸のひとつであるトレオニンというアミノ酸には2つの不斉炭素原子が存在します。
トレオニンの立体異性体
乳酸の時と同様に、まずはエナンチオマーを考えます。
エナンチオマーは「鏡に映った像」のことなので、すべての不斉炭素原子の左右の原子/原子団を入れ替えます。下の図の構造は互いにエナンチオマーの関係です。
次に、エナンチオマーにはならない立体異性体(ジアステレオマー)について考えてみます。
エナンチオマーは「鏡に映った像」なので、2つの不斉炭素原子の左右の原子/原子団を入れ替えました。
しかし、ジアステレオマーは「鏡に映った像ではない立体異性体」なので、2つの不斉炭素原子のうち、1つの不斉炭素原子の原子/原子団のみを入れ替えます。
上の図は、互いにジアステレオマーの関係となります。この図では、上の不斉中心まわりを入れ替え、下の不斉中心まわりはそのままとなっています。
それとは逆に、上の不斉中心まわりはそのままで、下の不斉中心まわりを入れ替えたものも存在します。
以上の4つがトレオニンのすべての立体異性体です。
不斉炭素原子を持つ化合物の立体異性体を考えるとき、ある1つの不斉炭素原子周りの原子/原子団について「入れ替える」か「そのまま」かの2通りの選択肢が存在します。
よって合計で最大2^n個の立体異性体が存在することになります。
トレオニンの場合は2つの不斉炭素原子が存在するので合計 2^(2) = 4つの立体異性体が存在することとなり、確かに上で見てきた異性体の数と一致します。
最後に、それぞれ立体異性体どうしの関係を整理します。
立体異性体どうしの関係
上で挙げた合計4種類の構造はすべてエナンチオマーまたはジアステレオマーの関係となっています。
その関係をまとめます。