大学化学における分子の双極子モーメントの考え方

2019年2月15日金曜日

物理化学

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大学化学において、分子全体の双極子モーメントを考えることがあります。

これは、ある分子が極性分子であるか、無極性分子であるかを判断するのに役立ちます。

結合がひとつしかない分子では、双極子モーメントを考えるのは簡単ですが、結合が複数ある場合は分子の立体的な形まで考慮して考える必要があります。

結合がひとつしかない分子の場合

例えば塩化水素$HCl$のような分子を考えます。電気陰性度(原子が結合電子を自分の方に引き付ける能力のこと)を比較することで極性を持つか、また、極性の向きを判断できます。

水素原子の電気陰性度は 2.1 であり塩素原子の電気陰性度は 3.0 です。
このことから、塩素原子は結合電子をより自分の方に引き付けるということがわかります。

よって水素原子は微小に+を帯び、塩素原子は微小に-を帯びます。
それぞれδ(デルタ)という記号を用いてδ+、δ-を帯びていると表現します。

これは、図で表すと以下のようになります。




結合が複数ある分子の場合

$CH_{4}$のように結合が複数存在する分子の場合、電気陰性度の差に加えて分子の立体的な形を考慮する必要があります。なぜなら、分子全体の双極子モーメントは各結合の双極子モーメントのベクトル和で表されるからです。ベクトル和というのは矢印の向きと矢印の大きさという意味です。

例として分子全体として双極子モーメントを持たないメタン$CH_{4}$と、双極子モーメントを持つクロロメタン$CH_{3}Cl$を紹介します。

$CH_{4}$の場合

メタンは正四面体です。さらに各結合の双極子モーメントの大きさが等しいため、打ち消しあって、分子全体では双極子モーメントは 0 となります。


$CH_{3}Cl$の場合

クロロメタンも四面体構造ですが、4つの結合のうち、ひとつがClとなっているため正四面体ではありません。さらに炭素原子の電気陰性度よりも塩素原子の電気陰性度の方が大きいため、矢印の向きが逆になります。よって、分子全体としては $C-Cl$結合間の双極子モーメントを強める形となるため、分子全体で双極子を持ちます。






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