強酸×弱塩基または弱酸×強塩基の中和反応により生成した塩の水溶液の液性は簡単に判断することができますが、弱酸×弱塩基の反応により生じた塩の水溶液は解離定数を考慮して考える必要があります。
今回は、説明のため酢酸(弱酸)とアンモニア(弱塩基)を用意しました。
$CH_{3}COOH + NH_{3} → CH_{3}COONH_{4}$
この中和反応により生じた酢酸アンモニウムが溶けた水溶液の液性を考えます。塩は水溶液中で電離するので、以下のようにイオンとして存在しています。
$CH_{3}COONH_{4} → CH_{3}COO^{-} + NH_{4}^{+}$
ここで、弱酸・弱塩基の性質を思い出します。弱酸・弱塩基は水溶液中で電離しにくい物質のことです。
そのため、酢酸イオン、アンモニウムイオンはいずれも、水分子と反応して分子形に戻る反応を起こします。
$CH_{3}COO^{-} + H_{2}O → CH_{3}COOH + OH^{-}$ ( 1 )
$NH_{4}^{+} + H_{2}O → NH_{3} + H_{3}O^{+}$ ( 2 )
塩の水溶液の液性は、この反応の起きやすさに左右されます。
( 1 ) の反応が ( 2 ) の反応よりも起きやすければ、水溶液中にはより多くの$OH^{-}$イオンが存在することになるので塩基性を示しますし、逆ならば、酸性を示します。
反応の起きやすさは酸(塩基)解離定数 (Ka、Kb) により判断することが出来ます。
Ka(Kb)が大きいほど強い酸(強い塩基)です。
それは電離しやすいという意味であり、イオン形で存在しやすいことを意味します。
それはつまり、上記の ( 1 ) および ( 2 ) の反応が起きにくいということです。
例えば 酸の Ka > 塩基の Kb なら ( 1 ) の反応よりも ( 2 ) の反応が起きるため水溶液中には $H_{3}O^{+}$が多くなり水溶液は酸性を示します。
結論としては 中和して生じた塩の液性は解離定数が大きい物質の液性を示す ということになります。
ここで、酢酸の $K_{a} = 1.75 × 10^{-5}$ であり アンモニアの $K_{b} = 1.71 × 10^{-5}$ です。※1
よって酢酸はアンモニアに比べて、イオンで存在する方が安定ということになり ( 1 ) の反応は ( 2 ) の反応に比べて起きにくく、酢酸アンモニウム水溶液は酸性を示します。
Ka(Kb)が大きいほど強い酸(強い塩基)です。
それは電離しやすいという意味であり、イオン形で存在しやすいことを意味します。
それはつまり、上記の ( 1 ) および ( 2 ) の反応が起きにくいということです。
例えば 酸の Ka > 塩基の Kb なら ( 1 ) の反応よりも ( 2 ) の反応が起きるため水溶液中には $H_{3}O^{+}$が多くなり水溶液は酸性を示します。
結論としては 中和して生じた塩の液性は解離定数が大きい物質の液性を示す ということになります。
ここで、酢酸の $K_{a} = 1.75 × 10^{-5}$ であり アンモニアの $K_{b} = 1.71 × 10^{-5}$ です。※1
よって酢酸はアンモニアに比べて、イオンで存在する方が安定ということになり ( 1 ) の反応は ( 2 ) の反応に比べて起きにくく、酢酸アンモニウム水溶液は酸性を示します。
ただし、多くの場合、酢酸アンモニウム水溶液について「酸性を示す」という言い方はしません。
証明は省きますが、酢酸アンモニウム水溶液について
$pH = -\log{\sqrt{\displaystyle \frac{K_{a}K_{w}}{K_{b}}}}$
という式が成り立ちます。
この式に対し値を当てはめて計算すると $pH = 6.994979...$となります。
ほとんど中性ですね。
酢酸とアンモニアの解離定数にほとんど差がないのでこのような微妙な結果となってしまいましたが、上記のように考えることで弱酸と弱塩基の中和反応により生じた塩の水溶液の液性について決定することが出来ます。
※1 酸の解離定数および塩基の解離定数は参照元により多少異なり、今回のような酢酸とアンモニアのように差がほとんどない化合物では、どの値を採用するかによって酸性とも塩基性ともなってしまいました。酢酸アンモニウムは実際にはほとんど中性と考えられるので、このようにブレてしまうのだと思います。今回は基礎無機化学(花田 禎一)の値を使用しました。