ボツリヌス菌が作り出す毒素であり 1 g で 1000万人を地上から消し去ってしまうほどの毒性があります。
酸素のないところで増殖し毒素を産生します。肉類の缶詰やソーセージ、魚の発酵食品などでボツリヌス食中毒の報告があります。ただ、ボツリヌス症の発生件数は日本において0~5件ほどですのであまり心配する必要はないでしょう。
この、ボツリヌストキシンがなぜ毒性を示すか、その作用メカニズムについて簡単に解説します。
ボツリヌストキシンの作用メカニズム
ボツリヌストキシンは体内に取り込まれ、神経筋接合部で作用します。神経筋接合部とは、文字通り、神経末端と筋肉の接合部。
イメージ図で表すとこんな感じのところです。
神経末端からは、神経から送られてきた情報を筋肉に伝えるためのひとつとしてアセチルコリンという神経伝達物質が放出されます。図のオレンジの玉です。
しかし、ボツリヌストキシンは神経の内部に入り込み、アセチルコリンの放出に必要なタンパク質を分解してしまいます。これにより、アセチルコリンが放出されず、筋肉に情報が伝えられなくなります。
イメージとしてはこの図のようにタンパク質の助けによりアセチルコリンは放出されるのですが、そこにボツリヌストキシンが来ると
アセチルコリンの放出に必要なタンパク質を一部切断してしまいます。これにより、アセチルコリンは放出されなくなってしまいます。
結果、全身の筋肉が弛緩し、まぶたが下がったり、手足に力が入らなくなったりするそうです。呼吸筋が麻痺すると息が出来なくなり、命を落とすことになります。
ちなみに、ボツリヌストキシンは血液脳関門を通過することはできないので脳に直接作用しないため、麻痺や呼吸困難の間も意識は鮮明に保たれるらしいです。怖いですね。
このように怖ろしい毒素なんですが、筋肉を弛緩させるというその作用から顔の筋肉の緊張をほどくことでシワを取る治療「ボトックス」として美容目的にも利用されています。