有効核電荷の求め方

2018年5月30日水曜日

無機化学

t f B! P L
ある原子のある電子に注目します。

この電子が感じる原子核の静電気力的な力を有効核電荷と呼びます。

一般に、なぜか「感じる」と表現します。英語の直訳感満載ですね。

さて、なぜわざわざ有効核電荷などというものが定義されているのかと言えば、電子は原子核の陽子の正電荷をそのまま感じているわけではないからです。

というのも、例えば、2p軌道にある電子は1s軌道や2s軌道にある電子の影響で陽子の力が弱められているんじゃないかな、みたいな検討はつくと思います。

実際にはエライ人たちが原子軌道とかを考慮して計算して難しい方法で有効核電荷を求めたりしているようですが、われわれのような一般人でも簡単に有効核電荷を見積もる方法としてスレーターの規則というものがあります。

公式はずばり、こんな感じです。(スレーターの規則)
Z* = Z - S
(Z*は有効核電荷、Zは原子番号、Sは遮へい定数の総和)

遮へいという言葉が出てきました。
ある注目する電子は同じ軌道のほかの電子やほかの軌道の電子に核力を弱められていますね。これを遮へいされているといいます。

ちなみに、遮へいと同じような話で、貫入という効果もあります。貫入というのは、ある外側の軌道の一部がそれよりも内側の軌道よりも内側に存在するって話です。

この、遮へいだとか貫入だとかの強さは軌道によって決まっていて
貫入する強さは ns>np>nd>nf となっているので、この順番で、遮へいする強さも強いようです。(なんかよくわからんけど)

結果としていえることは、s軌道は貫入力が強く、遮へいする効果は強いが、自分は遮へいされにくい。f軌道は貫入力が弱く、遮へいする効果も弱く、自分は遮へいされやすい。ということです。

さて、話が少し脱線しましたが、遮へい定数の総和Sは以下のような規則により簡単に計算することができます。

①軌道をグループ分けする。
[1s][2s,2p],[3s,3p],[3d],[4s,4p],[4d],[4f]
sとpはまとめるってことですね。

②[ns,np]について
同じグループのほかの電子の遮へい定数:0.35(1sの場合のみ0.3)
n-1のグループの電子の遮へい定数:0.85
n-2以下のグループの電子の遮へい定数:1.0

③[nd],[nf]について
同じグループ:0.35
n-1以下のグループ:1.0

こんな感じになります。

さて、それでは実際に硫黄の3s,spの有効核電荷を求めてみましょう。

まず、硫黄の電子配置は

1s2 2s2 2p6 3s2 3p4

そうしたらグループ分けします。
[1s:2],[2s,2p:8],[3s,3p:6]

今回注目しているのは[3s,3p]のグループの電子のひとつですので、

②から、
同じグループのほかの電子の遮へい定数の和は
0.35*5 = 1.75
さらにn-1のグループの電子の遮へい定数の和は
0.85*8 = 6.8
そして最後にn-2以下のグループの電子の遮へい定数の和は
1.0*2 = 2.0
よって
遮へい定数の総和は
1.75 + 6.8 + 2.0 = 10.55

よって有効核電荷Z* = 16 - 10.55 = 5.45

となります。




キーワード検索